株式会社マルタイは即席めんのパイオニアとして、美味しく高品質で魅力ある商品を提供している九州の食品メーカーです。
「即席めんの開発、製造、販売を通して、豊かな食文化の創造に貢献する」という企業理念のもと、伝統ある独自の生産システムで、魅力あふれる商品を提供されています。
マルタイといえば棒ラーメン、棒ラーメンといえばマルタイと言われるほど絶大な知名度と認知度を誇り、なかでもその代表作である「マルタイラーメン」は、全国の消費者から大きな支持を受けています。
今回は、第23回の使用事例でご紹介した大崎 善治さんデザインの書体「くろかね」をパッケージの全面でご使用いただいている『山の棒ラーメン』の制作や、その他のパッケージデザインについて株式会社マルタイ マーケティング部の中園さん、デザインを担当された外部デザイナーの平田さん、村山さんにお話しを伺いました。
マルタイの商品へのこだわり
食品メーカーに課せられた「安心・安全な商品を提供する」ことを厳守するのは言うまでもなく、九州の企業として、今後も九州にこだわった、バラエティに富んだ商品を提供していきたいと考えています。
トレンドや市場調査をふまえた商品の企画に沿って、原料の調達、味の選定、形状の検討、デザインの選定など、各部署がそれぞれの役割を任されています。弊社の新商品開発には最低でも半年から1年の期間を要し、特に味の選定では何度も試行錯誤を重ね、納得のいくまで練り直しをします。
新商品の販売は主に春と秋に設定していますので、予定した商品をきちんと発売・案内出来るようスケジュールを組んだり、営業担当者との打ち合わせを定期的に行うことで、食の悦び、食の楽しみを食卓にお届けできるようにしています。
マルタイ商品のパッケージデザインについて
その商品開発フローの中でも私は、マーケティング部として商品の企画やデザインの選定などに深く携わっています。「めん」「スープ」「かやく」「調味油」の長い商品開発期間を経て、商品パッケージの作成が始まります。店頭に並んだときに、消費者さまの目に一番最初に触れる商品パッケージには、店頭で目立ち、インパクトがあるのはもちろんのこと、その商品のイメージやコンセプトにあったものを採用しています。
そのパッケージデザインは、こちらから具体的なイメージを伝えてデザイナーさんに作成いただくものや、提案としていただいたアイデアをもとに、話し合いでブラッシュアップしていきます。
特に、弊社商品のラーメンや皿うどんは、消費者さま自身で調理していただくものなので、調理の参考になるようにパッケージの調理写真にはよりいっそう気を配っています。彩りよく、おいしそうに見える写真を掲載するため、撮影の際には弊社の担当者が立ち会って、カメラマンに直接要望を指示しています。
また裏面には、法律で定められた通りの原材料表記などを行う大切な情報掲載箇所があるので、誤字脱字はないか、規定に反するところはないかと、何人もの担当者が繰り返し細かいチェックを行っています。また、レイアウトに関しても食品表示に関する法律規定を守りつつ、オリジナリティを残しながらも、誰が見ても見やすく分かりやすい書体やサイズを使うように心がけています。
アウトドアに適したラーメンとして開発
今回の『山の棒ラーメン』は、登山やアウトドアに適した商品として開発しました。もともと弊社のロングセラー商品『マルタイラーメン』がアウトドア関連の雑誌で度々取り上げられており、コンパクトな形態から持ち運びに便利だと重宝されていることや「山登りには必ず『マルタイラーメン』を持っていく」というような声を多くいただいたことが直接のきっかけとなりました。それならば!と、通常のラーメンよりもスタミナ補給や体力サポートに重点をおき、またエコ包装を特徴とした商品の開発に乗り出しました。
新鮮でひと際目をひくデザインのパッケージ
そのパッケージには、『マルタイラーメン』のモチーフである龍をキャラクター化し、より力強く躍動感のあるデザインを採用しています。また、山登りに適した商品というからには、龍の頭にヘッドランプ、背中にはリュック、手にはピッケル、足には登山靴、というように本格的な山登りアイテムを装備させるなど細部にまでこだわったデザインに仕上げています。
この『山の棒ラーメン』のパッケージに使った書体には、ゴシック体とも明朝体とも違うはっきりとした主張があり、それでいてどことなく丸く優しいイメージを抱きました。弊社の棒ラーメンのブランドイメージや、環境に配慮したエコ包装であるという商品のイメージ・コンセプトにぴったり当てはまったことが採用に至った経緯となっています。 弊社の商品のなかでもこのような書体を用いたパッケージは今までになかったので、新鮮でひと際目を引くものになり、おかげさまで、実際に購入したり店頭で見かけたという消費者の方にも弊社のこだわりに気づいていただき、称賛の声をいただいております。(中園さん)
デザイナーからみた書体「くろかね」について
最初にマルタイさまからデザインのご依頼があったときは、「登山など、アウトドアに適したラーメンを作りたい」ということでしたので、既に消費者さまからアウトドアに最適だと評価いただいている棒ラーメンのパッケージ形態はそのまま使うことにして、パッケージデザインの提案からさせていただきました。
現在採用しているパッケージとは別に、調理写真を掲載して横線の太い明朝を用いてパッケージデザインを提案したものもありましたが、この『山の棒ラーメン』は、企画の段階で「山ガール」などのキーワードが出ていたこともあり、登山の持つ“強そうで男っぽい”イメージよりも“強いけれど柔らかくかわいらしい”というイメージを表現していく方向で進めていきました。
そのため調理写真を掲載するよりは、モチーフである龍をイラスト化したデザインを前面に押し出し、かわいらしさをアピールすることにしました。龍がもともと持っている力強さと、イラストの持つかわいらしさを表現したパッケージのタイトルには、商品のコンセプトも考慮してできるだけ斬新なフォントを使いたいと思っていました。そこで、すぐに浮かんだのが力強くもどことなくかわいらしさも併せもっているフォントワークスさんの「くろかね」でした。
最終的にはタイトルだけでなく、裏面の調理法記載の文章などでもほぼ全面に「くろかね」を使ったパッケージデザインに仕上げています。こういった使い方は珍しいのではないかと思いますが、遊んでいながらも割と視認性がある書体なので横組でも縦組でもすんなり収まって使いやすいとも思いましたし、かわいい感じの「スーラ」や「Popハッピネス」などの書体とは違った雰囲気で、新しい感じがしていいですよね。
表現したいイメージは決まっていましたので、制作過程での大幅な変更はほとんどありませんでした。龍の持つ登山専用装備の他にも、パッケージ素材のアルミ地を利用して太陽に光沢を出したり、日の出と日の入りのイメージを味の異なる2種で表現させたりと、様々なところでデザインの工夫をすることでクライアントのマルタイさまにも高評価をいただいています。
個性と視認性、どちらも大切ですね
今回メインで使用した「くろかね」のように、個性がある書体をタイトル部分に持ってくることは広告でもパッケージでも多いですよね。特徴があるだけではなく、最近では視認性も求められるようになったので、かわいらしくも主張しすぎない「パール」や「ぶどう」などがタイトルでも使えるように太いウエイトも増えてくれればと思っています。また、これもウエイト展開のお願いなのですが「筑紫オールド明朝」は、太いウエイトがあるといいです!独自でフォントを太らせて使うよりも、錯視などの調整がされているものは使い勝手が違いますからね。(平田さん・村山さん)
<編集後記>
今回の『山の棒ラーメン』のご紹介は、TVのアウトドア特集で紹介されているのを拝見したことがきっかけでした。そのパッケージの前面に「くろかね」を大きくご使用いただいているのを見て、これは是非ご紹介させていただきたいと思い、取材依頼をさせていただきました。デザイナー側からだけでなく、メーカーであるマルタイさまからも「くろかね」についてのご感想をいただけたことで、より一層書体のもつ雰囲気などについてお伝えすることができたのではないかと感じています。今後も、『LETS』やその書体について広くご紹介できるよう努めてまいります。
企業情報
社名 | 株式会社マルタイ |
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所在地 | 福岡県福岡市西区周船寺3-23-42 |
TEL | 092-807-0711 |
FAX | 092-807-0716 |
URL | http://www.marutai.co.jp/ |
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