【デンソーウェーブ】ハンディターミナル「BHT」にUCフォント搭載。「製品のプレゼンスを高める」フォントとの邂逅

Interview

2001年に設立された株式会社デンソーウェーブ様は、今や我々の生活に欠かせないQRコードを開発し、RFID(Radio Frequency Identification)と呼ばれる近距離無線通信を用いた自動認識技術やロボット事業、IoT事業領域にも取り組んでおります。「社会の生産性向上に深く、広く寄与し、人々の幸福に貢献する」という企業理念の下、モノづくり産業をはじめとし、広く社会へ新しい付加価値を提供しています。

そんなデンソーウェーブ様のハンディターミナル「BHT」シリーズにて、多言語において統一されたデザインコンセプトを持つ「UCフォント」を2021年にご採用頂きました。今回は、実際にフォントの選定や採用に関わられたデンソーウェーブの山下さん、藤坂さんに「UCフォント」をご採用頂いた理由、今後の事業展望などについて、オンラインにてお話を伺いました。

【写真左】山下 由紀子(やました ゆきこ)
愛知県生まれ。大学卒業後、1990年にデンソーに入社。2001年にデンソーウェーブに出向。現在のAUTO-ID事業部の前身にあたる応用機器事業部で技術部に配属、ソフトウェアエンジニアとして従事。現在は、製品企画室に所属し次期商品の企画を担当。

【写真右】藤坂 華参(ふじさか かぞう)
三重県生まれ。大学卒業後、2009年にデンソーウェーブに入社。現在のAUTO-ID事業部の前身にあたる自動認識事業部で技術部に配属、ハードウェアエンジニアとして従事。現在は、製品企画室に所属し次期商品の企画を担当。

次世代型製品のコンセプトに符合した「瞬時に情報を正しく伝えられる」フォント

―― 山下さん、藤坂さん、本日は宜しくお願い致します!先ずは、お二人が所属されているAUTO-ID事業部のご紹介をお願い致します。

山下さん:デンソーウェーブはAUTO-ID事業、制御機器事業、ロボット事業の3つの柱で成り立っており、そのなかでAUTO-ID事業部は「自動認識」をキーワードに、効率化や働き方改革を推進する部署となっております。

1987年にリリースした世界初のバーコードハンディターミナル「BHT-1」はコンビニエンスストアや新幹線の移動販売など、バーコードを活用して販売管理や決済するような場面で長年活躍しており、自動認識のパイオニアとして業界をリードしてきました。

バーコードハンディターミナルの他にもQRコードを生み出し、RFIDにも注力しています。おかげさまで製造、流通、物流、医療など、幅広い業界のお客様に弊社製品をご愛顧頂いています。

藤坂さん:そもそも、そういった先進技術や製品は、デンソー、大きくはトヨタグループの製造現場でモノの流れを知りたいという「製造工程管理(かんばんシステム)」の観点が第一歩でした。

工程を管理するトレーサビリティ(※)へのニーズは、その後、製造現場だけではなく物流全体を支える領域まで広がっていき、現在はあらゆる倉庫や店舗などで情報集約を可能にするバーコードやQRコードが活用され、モノの流れが詳細に管理されています。

今回、御社のUCフォントを採用した「BHT」も、様々な作業現場で製品に付けられたバーコードやQRコードを読み取り、そのデータを管理システムへと繋ぐ役割を持った製品となります。

※トレーサビリティ(Traceability):
追跡を意味する「trace」と能力を意味する「ability」の2つを掛け合わせた造語で、モノの製造から消費までの過程を追跡することを意味する。不具合やトラブルの発生時に原因を特定したり対策を講じるために重要な考え方であり、製品の品質向上、ひいては企業への信頼の担保に繋がる。

「トレーサビリティ」の役割の一端を担うハンディターミナル「BHT」

―― AUTO-ID事業部のご紹介、ありがとうございます。ハンディターミナル「BHT」について、もう少し詳しく教えて下さい。

山下さん:BHTの開発に着手したのは1985年頃ですね。1970年代からバーコードを読むだけのハンドスキャナーの開発をスタートし、広い倉庫内でのピッキング作業や、スーパーマーケット(バックヤード)での発注作業などでも対応できるように、ハンディ機器にデータを表示・記憶・送信するといった「コンピューティング」の概念を取り込んだ製品をやろうと決めてスタートしたのがこのBHTです。

BHTを実際に使用されるのは、倉庫の中で物品を持ち運びする方や、工場の組立ラインにいる方、コンビニエンスストアの発注・検品業務に携わる方などです。性別や年齢を問わず幅広いユーザーを対象とした製品になりますので、老若男女問わず、使いやすくあるべきだという想いを込めて開発されています。

―― 御社以外にもハンディターミナルを製造・販売する企業は国内外問わず多くありますが、BHTの優位性はどこにあるのでしょうか?

藤坂さん:製品のクオリティに最大限こだわっているところです。具体的には堅牢性ですね。倉庫やバックヤードなどの慌ただしい作業の中では、ぶつけたり落としたりということが日常茶飯事ですが、動かなくなったり壊れたりすると、業務が止まり、お客様にとっても大きな損失になってしまいますので、業務用機器メーカとして、非常にこだわっているポイントになります。加えて、読み取り性能の高さの部分で優位性を持っています。

また、当社独自OS「BHT-OS」を搭載した従来製品で使用中のアプリケーションを、画面レイアウト修正なしに移管できる「画面互換モード」を実装し、無駄のないシステム構造による安定した動作と、従来機種との高い互換性で、お客様のスムーズな導入・運用をサポートしています。常にお客様目線で、お客様に寄り添いながら一緒に製品を磨き上げてきたという自負が有りますね。

―― BHTへの理解が段々と深まってきました!今回、「BHT-OS」搭載の最新機種「BHT-S40」「BHT-S30」の両機に「UCフォント」をご採用頂きましたが、そもそもなぜフォントに着目されたのでしょうか?

藤坂さん:元々、BHTシリーズで使用していたフォントは使用開始から15年近く経過しており、世の中の目まぐるしい変化に対してどこまで対応出来ているんだろうという想いを抱いたのが基点です。

製品企画担当として現場を俯瞰するなかで、女性やシニア、海外出身の方など、働いている方々が多様化し、現場のスピード感、効率化への意識も大きく変わってきていると日々肌で感じていました。新しい時代の働き方にBHT自体が馴染んでいくようにしたい、あらゆる方に使いやすい製品にしていきたいというところを考慮して、次世代型として開発中だった「BHT-S40」「BHT-S30」のコンセプトに「使いやすさ」を置いたところから、フォントにも意識が行くようになりました。

UCフォントを採用頂いた「BHT-S40」「BHT-S30」

―― なるほど。働き方の変容に即したコンセプト設計を行ったのですね。

藤坂さん:はい。その上でBHTの画面サイズは、2.4~3.2inchとコンパクトです。お客様の持ち運びやすさの観点からは非常に喜ばれますが、多くの情報を表示させようとすると必然的に小さい文字になりやすく、結果として見づらくなることに課題を感じていました。

また、商品型式や、製造現場の部品型番など、数字と英語が混在するものを扱うケースも多いのですが、その際、数字の0とO(オー)、1とI(アイ)などの見間違いはトラブルに繋がりますので、文字の形状判別も大きな課題でした。

山下さん:BHTを使用されるお客様のなかには、一日に一人で千個以上の荷物を取り扱うような繁忙な倉庫現場もあります。瞬時に画面を判読することがスムーズな作業に繋がりますし、移動を伴う作業をされている方も多く、画面の確認は出来るだけ短いことが望ましいんです。また、画面の見間違いにより誤出荷や誤発注などを引き起こし、会社に損害をもたらすケースも考えられます。

そのため、「瞬時に情報を正しく伝えられる」フォントの搭載が次世代型製品の必要条件のひとつでした。そこで浮上したのが、ユニバーサルデザインのコンセプトを持ったフォントだったんです。

「UDフォントを定量的に捉える取り組み」、その説得力が会社を動かす契機に

―― ハンディターミナルに対する課題感と、その課題感を前提としてユニバーサルデザイン(UD)のコンセプトを持ったフォントに着目した流れが明瞭になりました。そこからのプロセスについて、是非詳しくお聞かせ下さい。

藤坂さん:「BHT-S40」「BHT-S30」に搭載するフォントはUDコンセプトで進めると決めた上で、課題はデザインとコストでした。見た目は勿論のこと、どのくらいの費用で進められるのかが全く掴めない。ただ、先ずはデザインの観点から調べていこうと決めて調査を開始したら、フォントワークスのUDフォントに関するWebページが、非常に納得感あったんです。

―― どういったところが、藤坂さんの琴線に触れたのでしょうか?

藤坂さん:UDフォントを「視認性」「可読性」「判別性」というキーワードに分けて、それぞれに対して定量的に捉える取り組みを非常に大事にされていたところです。

UDって、定量的に捉えることが難しいと感じていました。上司を説得する上で、どういう風に良さを伝えたら良いんだろうと悩んでいたときに、御社のWebページに出会いました。

私自身、エンジニアとして当社に入社して、その後製品企画課に異動しましたが、UDフォントを定量的に捉えるというところを大切にしていて、非常に説得力が有りました。また、国際ユニヴァーサルデザイン協議会の実施するIAUDアウォードを受賞していることも知り、ユニバーサルデザインに対する取り組みの真剣さが感じられ、御社フォントの導入を本格的に考え始めました。

Webページのエビデンス資料をダウンロードして、稟請の際に活用したことを覚えています。最終的には、当時の営業担当の方にコストの相談にも柔軟に乗って頂いたことも大きかったですね(笑)。

「視認性」「可読性」「判別性」に加えて、「美感性」も加味されたフォントワークスのUDフォント。2016年には、「IAUDアウォード」のコミュニケーションデザイン部門で銀賞を受賞した

―― 嬉しいお言葉、ありがとうございます!その他、決め手となったところはありましたでしょうか?

藤坂さん:当時の営業担当の方に多言語対応の課題と、フォント容量の課題に対するソリューションを併せて提案頂いたことです。

―― その点、是非詳しく教えて下さい。

藤坂さん:BHTは仕向先の関係で、多くの言語を必要としています。現地で作業される方が使用する機器なので、現地語でないと作業できないケースが多いんです。

その課題に対して、UDコンセプトの日本語フォントをベースとして統⼀されたデザインコンセプトを持つ、読みやすい多言語フォント(UCフォント)を提案頂きました。その上で、タイ語、アラビア語、ヘブライ語などの複雑な表⽰ルールを持つ⾔語を、組み込み機器上で正しく表⽰するための「レイアウトエンジン」もセットで提案頂きました。この辺りの迅速、かつ当社要望に沿った対応は、大変心強かったですね。

後者に関しても、WindowsやAndroidといった汎用OSで使うようなフォント群は容量の関係で「BHT-OS」には実装が難しいと分かった際に、書体辺りの収録文字が多く容量の大きい日本語、中国語(簡体字・繁体字)に関して「軽量フォント」を直ぐに提案頂いて、もうこれしかない!と思いました。

―― 藤坂さんからの稟議を決裁する立場の山下さんは、藤坂さんからのご相談をどのように捉えていらっしゃいましたか?

山下さん:個人的には、時代にマッチしていていいかな、くらいの思いでしたが(笑)、 実際に藤坂が実施していた業務画面イメージの内容を、作業者のように一瞬で確認するという評価に参加してみたところ、認識しやすさに差があることを実感しました。 特に、フォントサイズが小さくなった場合や、英数字においてはその差が大きく感じられ、 「これは絶対に現場に必要!」という思いになりました。

また、他拠点で検証に参加した当社の営業担当からは「丸みの具合が綺麗」「今っぽい雰囲気」 という意見も多く出てきて、「綺麗さ」「新しさ」といった面でも優れていることがわかり、 途中から藤坂と強力に推進しました(笑)。

何より、こういった現場目線の新しさというのが、製品のプレゼンスを高め、結果として当社のファンを増やすことにつながるということに私自身気が付きました。 UCフォント選定のプロセスは、私にとっても貴重な学びの機会となりました。

「BHT」のインターフェース。以前(写真左)と、UCフォントを採用した現在(写真右)の比較

「人」中心の製品をこれからも生み出し続ける!

―― 御社でのUCフォント採用の経緯について、詳細を教えて頂きありがとうございました。最後に、御社事業の今後の展望についても教えて下さい。

藤坂さん:今後の社会動向や課題(人手不足)を考えると、我々の製品はより一層使命を増すと感じており、同時にUDも欠かすことのできない考え方になると思います。これから先もあらゆる人に使いやすい製品を追求・開発していきたいと考えています。

山下さん:当社の企業理念は「社会の生産性向上に深く、広く寄与し、人々の幸福に貢献する」であり、生産性向上には人が使いやすいことが不可欠だと考えています。当社ではこれからも、この企業理念をプロダクトデザインに落とし込み、「人を中心においた」製品を生み出し続けることに全力を尽くしていきます。

―― 本日は、貴重なお話をありがとうございました!

取材日:2021年6月23日





株式会社デンソーウェーブ

「社会の生産性向上に深く、広く寄与し、人々の幸福に貢献する」という企業理念の下、モノづくり産業をはじめとして多くの産業に向けて、FA・ロボット、自動認識(AUTO-ID)、制御、IoT事業を展開。その過程で生まれた「QRコード」などのコア技術や、自動化・効率化のノウハウを応用したソリューションを提供し、社会の発展に貢献している。
https://www.denso-wave.com/


この記事を書いた人

安藤 貴文

2011年フォントワークス入社。営業部所属。大学時代に所属した新聞サークルで初めてデジタルフォントに触れ、その奥深さに目覚める。政治学、言語学の観点から文字の歴史を捉える知見を得たいと、2021年4月より母校の大学の通信教育課程に進学。

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