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「パル」シリーズ第二弾は、西洋レトロとゴスロリがモチーフの「パルレトロン」

「パル」シリーズの第二弾となる「パルレトロン」は、西洋レトロとゴスロリがテーマとなり制作された書体です。 独特な縦画と横画が、ロマンチックな印象を与え、装飾的で華やかさを備える一方で、陰影もあるデザインは、ライトノベルのタイトル、キャッチコピー等に使用すると、非常に映える書体です。

書体のコンセプトや特徴など、本書体誕生の秘話について、書体デザインを手掛けた越智にインタビューを行いました。

きっかけは、「ゆるさとは真反対の、力強い書体が作りたい」

自分自身の第1作目となる、ゆる可愛さが売りの「パルラムネ」の制作が佳境になってきたときに、「ゆるさとは真反対の、力強い書体が作りたい」という創作欲が湧きました。

ただ、漠然としすぎてて、どんなデザインにするかを悩みながら、試作を重ねていました。ちょうどそのタイミングで、お客さまとお話をする機会があり、そこで、「大正ロマン」風またはレトロ風な書体が欲しい」とご要望をいただいたのです。

力強い書体、大正ロマン、、、第二弾の方向性で迷う部分があったものの、レトロな雰囲気のキャッチ系書体は、フォントワークスには無いなと思い、「では作ってみよう!」と思いました。

 

「大正ロマン」ってなんぞや? 

まずは、「大正ロマン」を自分自身の中で整理するため、映画ポスターなどの資料を片っ端から集めました。

「大正ロマン」で想像することは、手書き風の文字、癖の強さ、独特な雰囲気。そういったイメージのものを新しい時代に使うフォントとしてどうデザインするかが、ものすごく高い壁となりました。うまくデザインの方向性を捉えることができなかったのです。ただ、このまま悩んでも時は過ぎるだけなので、であれば、自分が捉えやすい方向に軸をずらして考えてみたほうがいいなと。

「大正ロマン」について整理すると、どうやら「大正」という言葉に引っかかりを覚えて、前に進めないようだと感じました。

では、もう一つのキーワードとなっていた「レトロ」を中心に考えてみようと思った時に、ロマン=西洋という意味も含まれるので、西洋とレトロをくっつけて、「西洋レトロ」ってどうかなと。

昔から「ゴスロリ」の服が好きだったので、「西洋レトロ」と「ゴスロリ」を掛け合わせてみよう

私は、昔から「ゴスロリ」の服が好きでした。それで、「西洋レトロ」に、「ゴスロリ」というエッセンスを加えようと考えたのです。なぜなら、アニメやゲーム好きな人にもゴスロリは受け入れやすく、使ってもらいやすい書体になるのでないかと思ったからです。

書体のデザインに、ゴスロリの要素を加えると、「ちょっと怖いけど可愛い」デザインの書体になるかなと感じました。
さらに、今回は派手な書体が作りたかったので、ゴスロリの派手さを「西洋レトロ」のコンセプトに一味足してみました。
ただ、「西洋レトロ」の書体が実際にウケるのかは不安でしたし、思いついたはいいものの、肝心の文字の骨格は何にも浮かばない状態でした。

 

漫画タイトルの作字ロゴを参考に。

西洋レトロやゴスロリが、本当にお客様に求められているのか?世の中に求められているものかどうかが不安だったので、本屋さんに行って、今の制作の現場で流行っているものだったり、世の中の流行だったりを肌で感じてこようと思いました。
特に、漫画などのロゴで、書体になっていない作字のロゴは、デザイナーがオリジナルで作っているものだからすごく参考になるものが多いです。どんなロゴが流行っているか傾向が掴めるかと思い、いろんなコーナーをぐるぐる回りました。そうしたら、意外にも、西洋系にまとめているロゴが多いことがわかりました。みなさん、西洋ものが好きなんだと。それで、このコンセプトの書体は、受け入れられると確信しました。

他にも参考になると思った書籍はタイトルを書き留めたり、あとで調べたりして、まずは制作における資料づくりをやっていったという感じですね。コンセプトが決まり、書体の骨格も見えてきました。

試作へ

デザインのモチーフは「カリグラフィー」「ブラックレター」「ゴスロリ(装飾)」

「西洋レトロ」のデザインは「カリグラフィー」「ブラックレター」「ゴスロリ(装飾)」の要素を混ぜて作成しました。
ひし形の飾りがついているところ、筆はじめのところ、ハライ(リボンっぽい)が装飾=ゴスロリっぽさが出る部分で、
欧文は、ブラックレターの要素を取り入れて。ブラックレターのかっこよさ、引き締まり感、デザインの整列性。そういうところが参考になりました。それに、書体として成立させる要素もあります。
カリグラフィは手書き文字なので同じ文字でも全く一緒ではないんです。
カリグラフィの要素を100%にしてしまうと柔らかさや優しさだけになってしまい「激しさ」が無くなってしまうので、その部分をブラックレターで補完しながらデザインを作り上げました。

試作が完成し、筑紫書体デザイナーの藤田に見せることになった時に、「文字は骨格で見せなさい」という藤田の考えとは真反対のものを作っているため、今回の装飾のある書体は邪道だと思われるんじゃないかと、ビクビクしながら見せました。
でも、すんなりOKが出て、拍子抜けしたことを今でも覚えています。

その後、試作書体を実際の使い手となる、装丁家さんにお見せする機会があって。それを見せたら、一発で「これがいいね!」と好感触をいただきました。試作から1年経たずに、次のリリース書体に決定したのです。
ただ、イメージ優先で試作した書体のため、骨格の細かいデザインを考えていなかったのでとても焦りました。

「パルレトロン」制作を開始

まずは漢字を制作

「パルレトロン」の制作にあたって、まず基本漢字からはじめました。

パルラムネは昔話の文章に沿って一文字ずつ作りました。しかし、パルレトロンは長い文章を読ませるような書体ではないので、書体のイメージに合う楽曲のタイトルを集め、そのタイトルの漢字を一文字ずつ制作しました。

手探りで骨格のデザインをしましたが、パルラムネとは真反対のデザイン書体なので当初はコツをつかむのが難しく、制作にはなかなか難航しました。
書体デザイナーの後輩2名に手分けして漢字を作ってもらい、私は監修、修整に回ることで効率化をはかりました。

続いて平仮名、片仮名の制作へ

続いて、平仮名・片仮名の制作に入りました。
パルレトロンの制作で一番難しかったのが、まさに平仮名でした。漫画のタイトルやロゴ、ポスターなどを参考にしたいと思っても、漢字ロゴはたくさんあるのに、平仮名は「と」と「の」くらいしかなく、参考になる資料がなかったのです。

平仮名は漢字や片仮名とは違い、丸みのある形が特徴なので、とげとげしいパルレトロンでどうデザインをすればいいのか、とても困難でした。丸みを残したデザインにするとダサくなり、直線だけにするとややいかついデザインになってしまいます。
筑紫アンティークゴシックのデザインや、カリグラフィの本を参考にしながら、丸みを残しつつも、緊張感が表現できるように調整をしました。

ひらがなの制作に結果的に5ヶ月くらいを費やしました。正直、この平仮名の制作に関しては、なかなか思うように進まず、先が見えない状態でした。

欧文数字の制作


「西洋レトロ」のコンセプトと合致する言語なので、水を得た魚のように、楽しんで制作を行えました。
欧文についてはブラックレターの要素をたくさん取り入れたデザインにしたかったのですが、ブラックレターの文字はどの文字か認識しづらい側面があるので、カリグラフィの要素を多めに入れてきちんと判読できるように調整をしました。
 


開発時の資料

リリースについての発表がフォントワークスサイトで掲載されたのちに、自身のTwitterでもお披露目しました。

驚くほどの反響をいただき嬉しかったですし、リリースの最後の大詰めの作業も頑張ろうと改めて思いました!

書体デザイナー 越智亜紀子のご紹介

書体デザイナー越智についてのご紹介はこちら。