手書き書体「クックハンド」の魅力をデザイナー 桑原氏に伺いました

Stories

アニメや漫画にも人気の「ゴスペル」に続く、書体デザイナー 桑原氏の最新書体「クックハンド」。

「レシピ」や「お客さまの声」のような、手書き感を表現したい箇所に、あまりクセの強くないさらっとした手慣れたタッチがぴったりはまり、さらに前かがみの特徴的なデザインが使い手に親しみやすさも与えてくれます。

今回は、書体「クックハンド」のデザインコンセプトや、制作のきっかけ、誕生秘話について、書体デザイナー桑原氏に伺いました。

▲「クックハンド」書体サンプル
▲「クックハンド」書体サンプル

「クックハンド」制作のきっかけ

書体のデザイン・コンセプトは…、などと言うと大げさでいつも気後れするのですが、そもそものきっかけは近所のスーパーマーケットで配られていた「今日の献立♪」といったような手書きの小さなレシピでした。そこに表されていた文字が、さりげなく手慣れたタッチで気持ちが良かった。こんなメモを見ながら、いつもとちょっと違う料理を作り食事を楽しむのは、ささやかではあるけれど生活のエッセンスだと感じて、身近な生活に寄り添うような手書き書体があったらいいなと思い制作を決めました。

「クックハンド」デザインコンセプト

▲点画が交差してできる鋭角のスミだまり

点画の交差してできる鋭角にはスミだまりをつけ、印象を若干柔らかくしています。しかし、それも気分で、決まったところに必ずというルール化された処理ではありません。ルーズと言えばルーズな書体です。

先に、レシピメモが書体制作のきっかけと書きましたが、今どきはプリントなど紙媒体ではなく、スマートフォンやタブレットPCなどでレシピを確認しながら料理するということになるのでしょう。その意味では、多少ルーズではあっても読みにくくならないようにひと文字ひと文字、丹念に点画を配置するように制作しました。結果、雑味が落ちやや味が薄くなってしまいましたが。

思いついたのは4年ぐらい前でしょうか。それからは、まず自分の手書き文字の練習をはじめました。自分の字を練習するというのも変な話ですが、毎日1時間ぐらい鉛筆やボールペンを持って自分の字の練習をしました。

手書きとなると取り留めがなくなってしまう気がして、また書きっぱなしでは雑味が多く読みづらいものになってしまう。タイプフェイスとするためには、ある程度の処理を詰めることも必要です。ですので、練習したのが完全に自分の字かというと、、、そうでもありません。

文字は全体的にやや前かがみのデザインで左に傾いています。横組での使用を想定して制作しました。

「料理 + 手」=「クックハンド」

「味」とか何とか、料理と文字は意外と近しい存在なのでしょうか。「クックハンド:CookHand」という書体名も、料理をしたり字を書いたり、手のおこないを思わせ気に入っています。だからといって、料理専用にこだわった書体ではありません。気軽に、日常的なものごとを表すのに使用されることを望みます。


下記より、フォントの試し打ちが可能です

桑原 孝之氏 プロフィール

デジタルフォントデザイナー・エンジニア
1955年静岡市生まれ。1977年、加藤辰二主宰東京銀座並木スタジオ入社、岩波明朝系精密レタリングの修行を始める。1986年退社後、主にソニー(株)AV機器のドットフォントの制作。

同じカテゴリーの記事

More

関連記事