老舗質屋「大黒屋」のリブランディング 筑紫書体で表現した「品」「高級感」の佇まい

Interview

▲関東エリアで放送のCM「鑑定」篇

CMでは、ハイブランド風の演出でブランド品の市場価値を見極める同社の鑑定技術をアピール

ブランド品の買取・販売を行う「大黒屋」が、関東エリアでは初となるCMの放送、グラフィックの制作、それにあわせて企業ロゴをリニューアルするなど、創業72年を迎えてリブランディングを行いました。

今回、ロゴの制作などのクリエーティブに携わったのが、CM・グラフィック・webキャンペーン・ロゴとこの案件の統括を務めた株式会社電通のクリエーティブディレクターの中川氏、アートディレクションを行なった株式会社電通のアートディレクター永井氏と、株式会社シェルパの若林氏です。

老舗企業のリブランディングへの取り組みの中で、今回選択いただいたフォントについてお話を伺いました。

「ハイブランドを扱っている」会社だからこそ、品良く堂々としたロゴであるべき

--ロゴもCMのグラフィックもどちらも筑紫書体をご使用いただいています。もともと、大黒屋さまからのご依頼内容と合わせてお話をお聞かせください。

-中川氏

大黒屋さまよりフリマアプリ全盛の今、次世代に向けた リブランディングのご相談があり、CMやグラフィックを制作するタイミングで、ロゴも一新することになりました。

-永井氏

さまざまなフォントを使って検証したんですけど、やはり、「ハイブランドを扱っている」会社だからこそ、品良く堂々としたロゴであるべき。その上で最初は老舗感、歴史、上品さを大事にしたいと思っていて、明朝体で進めていたのですが、以前見かけて強烈にインプットされた書体があって。ゴシックなのに筆で書いているような、明朝ではないけど強さも上品さも兼ね備えているような、それが「筑紫オールドゴシック」でした。

若林さんと一緒に作っていく中で、フォントのはらい部分が力強いので末広がりの大黒屋の文字と合うんじゃないかという話になりました。

旧ロゴ
ロゴの完成形

家紋のようなデザインにし「歴史」「信頼感」を表現

--他にも候補となった書体はありましたか?

-永井氏

他にも細い書体でも作ってみたのですが、やはりこちらの方が堂々としていて良いと、筑紫オールドゴシックに決定となりました。

大黒屋の前にある「質」のデザインについてお話しますと、日本には家紋というものがあります。家紋は長い家の歴史とか、信頼感といったことを表す記号であると思っていて、質という文字を家紋のようにデザインし一つのロゴとすることで、「大黒屋」の信頼感を表現しようと考えました。

以前のロゴも、「質」という文字を取り囲む枠は四角と丸でしたので、引き継ぎつつ活かして、お客さまとの繋がりや物との関わりなどを表現し直しました。

-中川氏

大黒屋のキーカラーは黄色なのですが、もともとのロゴはその黄色背景に、青と赤と黒というように色数が多かったので、黒で統一させて、品を持たせました。

表現したのは「末広がり」。筑紫オールドゴシックに感じる「品」

--文字への改変についてお聞かせください。

-永井氏

「大黒屋」の文字の中にある「はらい」の部分を少し改変して、末広がり強調して表現しています。

この書体って、ゴシック体なのに明朝体を感じるんですよね。それがまさに「品」という部分を醸し出してくれているんだと思います。

-若林氏

「大黒屋」のハライの部分を全て同じエレメントで作り、3つの文字が一体となって見えるようにしました。

-永井氏

筑紫オールドゴシックは、オールドスタイルなのにモダンさがあって絶妙ですよね。

-中川氏

競合他社との差別化として、信頼感、鑑定力を推しだすにあたっては、結局太い方がしっくりきた。初見で「これ、いいね」となりました。

その上で、ガラッとかえすぎるとお客さまからわかりづらくなってしまうので、「質 大黒屋」は生かすことになりました。更なる調整として最近はインバウンドの方も多いので英文字を入れました。オフィシャル感、ハイブランドを扱っているので、そういった高級感も出るように。

「鑑定」というものの佇まい

-中川氏

全盛を迎えているフリマアプリは他人が価値を決める場所なので、自分の大事にしていたブランド品を売るのにふさわしいかというと疑問の場合もあります。
また、質屋の競合他社と比較した場合は「どうせ行くならおしゃれな方がいい」

フリマアプリや他社との差を明確にするために、「鑑定」に重きを置いて、その佇まいを表現したかったのです。
それには、このフォントが合致しました。



--質屋さんは正直ちょっと入りづらい。そういったところがこのロゴで払拭されるといいですね。

-中川氏

敷居の高さとか、どこか裏暗さみたいなものを感じる方は多いと思います。実は、「質」という文字を取ろうかどうかで、悩んだんです。でも、鑑定を売りにするときに、バックボーンとして質というのがあったほうがいいなと。

また、コミュニケーションの話ですが、CMやグラフィックをめちゃくちゃかっこいいものを作ったので、そこに「質」って入ると、インパクトがあったのでよかったなと。

六本木・表参道・新宿・渋谷をジャック!

六本木駅に掲示されたグラフィック
広告でストーリー展開を行う六本木駅。エスカレータを乗降しながら見入ってしまう仕掛け。
表参道に掲示されたグラフィック ハイブランドと女性誌の聖地である表参道にも掲出し、ハイブランドの広告に囲まれてとても目立っていました。
新宿に掲示されたグラフィック

--グラフィック・CMのコピーの部分で筑紫オールド明朝を使用された理由を教えてください。

-永井氏

コピーの「その価値は、鑑定で。」は、グラフィックのイメージに合うように、少しシアーをかけた明朝が良いと考え、検証していきました。その中で、「筑紫オールド明朝」が一番品があって今回のイメージに合いました。

-若林氏

グラフィックでは、大黒屋のロゴの上にタグラインの「ブランド品、売るなら。」と入っています。こちらも「筑紫オールド明朝」を使用していますが、ロゴを邪魔せず読みやすいフォントですよね。

--反響はいかがでしたか?

-中川氏

SNSで結構呟かれていましたね。

このポジションを獲ろうとした競合他社はなかったと思います。

他の質屋は、相変わらず雑然としてという感じですし、フリマアプリだと、「簡単・手軽・安い」というイメージ。

そこの隙間を見つけたというのが、今回は大きかったですね。

他社とどう差別化をはかれるかという課題に対して、カギは「品」「格式」「鑑定力」。

つまり「ハイブランドを扱う佇まい」を表現することでした。

電通 中川氏と永井氏、シェルパ 若林氏のご紹介

株式会社電通 CDC クリエーティブ・ディレクター/コミュニケーション・プランナー 中川 真仁氏 コピーライター・CMプランナーとしてキャリアをスタート。webプロモーションからPR領域など統合的なコミュニケーション施策を行う。飲料メーカーや食品、アーティスト(歌手/バンド)のコミュニケーションなどを担当。
株式会社電通 第1CRプランニング局 アートディレクター 永井 淳也氏 アパレルや食品、スマホゲームのキャンペーンなどのアートディレクションを担当。
株式会社 シェルパ 代表 若林哲也氏 アートディレクター。 2009年に独立。 CI・VI開発をはじめとしたブランディング、広告企画・デザイン、WEBデザイン等を手がける。

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